願いをかなえる女性の神さまも笑った? 石神さん春祭り、粛々と、にぎやかに、磯日待ち
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海女さんも奥さんも神さまも笑った!? 男衆がもてなす石神さん春祭り
2019年5月8日
元号があらたまり令和となりましたね。4月27日からの10連休、伊勢神宮はまるでお正月のような賑わいでしたが、相差の神明神社石神さんのほうにも、たくさんの方がお越しになりました。
そして、連休明けの5月7日。
観光の方の姿が少ないのは当たり前ですが、漁師や海女さんたちで活気づくはずの漁港も、ご覧のような静けさでした。
青空で風は弱く海は穏やか。本来なら絶好の漁日和のはずですが・・・?
相差漁協の前にいたおばあちゃん(たぶん海女さん)に、聞いてみました。
「ああ、今日は"ナナの日"やからなあ。漁は休み」
ナナの日とは、5月7日の「磯日待ち」のことを言うようです。天気がどうあれ、相差では毎年、この日は漁が休みなのだそう。
それから、別のおばあちゃん(こちらもたぶん海女さん)に言われました。
「石神さんに行ってきない。今日は春祭りやで、振る舞いがあるでな」
そうです。この日は相差町内会が主催する、「石神さん春祭り」の日。そもそも、それを取材するつもりで来たのでした。早速、石神さんがある神明神社に向かいましょう。
椅子が並べられた石神さん本殿前。式典の開始は午前10時半からとのこと。
境内の広場にはテントが張られ、大がかかりな振る舞いの料理の準備が進んでいました。
テントの奥に、400人分は炊けるという大きな鍋が、すでにぐつぐつと。みそ汁のようですが、ダシはなんと・・・。
伊勢エビ!!! しかもこの量!!!
相差では4月下旬まで伊勢エビ漁が行われていました。こちらに入っているのは全部、地元産ですって。どひゃー。
鍋のほかにも網焼き、刺身、たこ焼きなどなど。料理の支度をしているのは相差の男性たち。「男衆」と書いて「おとこし」と呼ぶそうです。
プログラムは、前半の午前中が大漁と海上安全を祈る式典。
そして正午からは、ふだん、家事に仕事にとがんばってくれている女性たちを、男性がもてなす祝宴となっています。楽しみです。
さて、定刻の午前10時半。再び石神さん本殿前です。
海女さんたちを前列に、地元の婦人会など、女性たちの代表が着席しました。取材のテレビカメラも来ていて、ぴんとした空気。
頬かむりからのぞく海女さんたちの表情は・・・
男性たちは後ろに立って見守ります。
式典は、お祓いや祝詞(のりと)など、ほかの神社と同じように粛々と営まれました。珍しかったのは、女性神職の手による"八雲琴"の歌と演奏です。
「わたつみのひめ たまよりは ねがいかなえる めがみなり――」
海女さんは、町内に15ある"かまど"のグループの代表が出席。相差海女組合会長の中村千津子さんが、玉串を捧げました。
町内会によると、この日の参加者は約300人。
厳かな式典が終わりました。さあさあ、祝宴の始まりです。
境内の広場に、地元の住民もよそからの参拝者も集まって来ました。ベビーカーを押すお母さんたちもいますね。
はい、こちらは調理場の炭火焼き場です。
サザエにアッパ貝! そして・・・
また伊勢海老がどっさり!!! これ、ほんとに振る舞いなんですよね(笑)
お腹を空かせた女性たちが列になり、待ってましたと料理を届ける男衆。
こちらは食事席のテント。
あっ、さっきのベビーカーのお母さんたちだ。みなさん満腹のようですね。
「おいしかったですよ。子供たちはもう眠くなっちゃってる(笑)」
お出かけファッションで、あの豪快な伊勢エビ汁を飲んでいた2人も。インタビューすると、松阪市からお礼参りにやってきたお友達同士でした。
「お礼参り、5回目なんです。願いがかなっておいしいものまで食べられるなんて、令和最初のラッキーです!」
テントの前で、志摩市の恵利原早餅搗保存会による、威勢のいい早餅つきパフォーマンスが始まりました。
太鼓演奏。小学生の団体も見学に来ました。
それから、招待者が案内された別会場「こもり堂」についていきました。
・・・えーっと、お酒を飲まれる方もいるみたいなので、ここのリポートは文字だけにしておこうかな(笑)
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では、海女さんたちのテーブルに突撃。
男衆の手料理はいかがですか?
「最高。相差のものはいつも食べてるけど、作ってもらうと余計においしい。上げ膳、据え膳で、片付けもせんでええし。あなたも食べる?」
え、私(男)ですか? じゃあ、せっかくなんで・・・。
「いくらでも食べない。(男衆が)もってきてくれるから」(と、言って記者にどんどん刺身をくれる)
大トロ! すみません、いただきます。うまいっ! え、カンパチも? すみません、いただきます。これも絶品! あ、お酒・・・は、今日は遠慮しておきます(笑)。
誤解のないように言っておくと、振る舞いは、男性が食べてはいけないわけではありません。
ただ、この場はあくまで女性が主役なので、控えめに(と言いつつ、十分、ご馳走になってしまいました・・・)。
ごちそうさまでした。
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「あーっははは!」
こもり堂から外に出ると、一段と大きな笑い声が聞こえました。
見るとなんと、さっきの餅つきに海女さんたちが飛び入り参加しています! シャッターチャーンス!
大きな木槌を振り上げてえいっ、えいっと餅をつく海女さんたちを、みんなが応援して大盛り上がり。この日、一番の笑顔が撮れました。
つきたてのお餅は、お茶ときなこをまぶしてすぐに振る舞いへ。
またまた、あっという間に行列ができて売り切れ。みんなよく食べるなあ。
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祭りが終わって振り返ると、女性たちはもちろん、おもてなしをした男性たちも、いい顔ばかりでした。
石神さん春祭りは、今年が17回目。意外と新しいんですね。
でも、働き者の女性が多い相差で、男性がもてなすこの祭りは、地域にとってなくてはならない風景に見えます。
だって、女性のキゲンがいいことは、とにかくいいこと!
そうに決まってますよ。ねえ、男性の皆さん?
ありがたいことに、式典から祝宴が終わるまで、ずっといい天気でした。
そういえば、神明神社も石神さんも、お祀りされている神さまは女性。
天上から、ゴキゲンに見ていらしたのかもしれませんね。